「機械指令➡機械規則」時代の​製造業が​直面する​変化と​対応ポイント

このコラムを読んでわかること

  • 機械規則の対象となる製品
  • 機械指令により何が変わるのか
  • 製造業が直面する3つの壁
  • 製造業に必要な対策

1. はじめに

「機械指令(2006/42/EC)」とは、欧州(EU)で機械を市場投入する際に遵守すべき健康・安全の要件を定めた法律です。EUで長年利用されてきた機械指令は、2023年に官報掲載され、2027年1月20日から全面適用される「機械規則(EU 2023/1230)」 に置き換えられます。これは、デジタル化・AI・サイバーセキュリティといった、現代のソフトウェアによるリスクが機械の安全性に深く入り込んだ状況に対応するための大転換といえます。当社が、IoT機器セキュリティ検証サービス事業者として製造業のお客様と議論する中で強く感じるのは、「機械安全=ハードウェアの問題」という時代は終わり、ソフトウェアの品質とライフサイクル管理こそが、今後のCEマーキングの中核を担うようになるということです。

2. 対象製品

対象機械指令機械機械規則
機械可動部を持つ装置同様に対象
交換可能な装置主機に取り付けて機能変更同様に対象
安全部品安全機能を担う部品同様に対象
荷役用アクセサリスリング・フック等同様に対象
チェーン・ロープ等荷役用途同様に対象
伝達装置取り外し可能な伝達装置同様に対象
安全関連ソフトウェア明確な規定なし対象として明確化
AI搭載機械想定なし新たに対象
高リスク機械Annex IVAnnex Iに再構成・拡大

3. 機械指令から機械規則へ ― 何が変わる?

機械規則(EU 2023/1230)は、 指令(Directive)ではなく規則(Regulation) であるため、加盟国により解釈が分かれる余地がなく、EU域内で即時・統一的に適用される法令です。主な変更点は以下のとおりです。

変更点内容対象
デジタル化・AI・ソフトウェア起因リスクへの直接対応機械規則にはサイバーセキュリティ・AI・ソフトウェアに関する要求が新規に追加
  • サイバー攻撃による危険動作
  • AIを利用した自立制御の予測不能性
  • ソフトウェア更新による安全性の変動(特にOTAアップデート)
高リスク機械の見直しと第三者認証の強化以前は自社による自己審査でCEマーキングを取得できた機械でも、ソフトウェア機能を追加した結果高リスクに分類されると第三者による適合性評価が必須
  • AIや自立動作を含む一部カテゴリー
デジタル文書化の容認要求があれば紙媒体も提供可能である事を条件とし、デジタル文書の提供を認める
  • 取扱説明書
  • 適合宣言

4. 製造業が直面する3つの壁

製造業の壁内容新しい課題・対象
ソフトウェア更新が「安全性の再評価対象」になるソフトウェアやファームウェアの更新で安全性が変わる場合、再評価・再認証が必要になる新しい課題:
  • 安全性に影響する変更とは何か
  • アップデート前後のCE準拠状態をどう証明するか
サイバーセキュリティは設計安全(Safety by Design)の一部になる機械の危険要因に「サイバー攻撃による予期せぬ動作」が含まれているCEマーキングの必須要件:
  • ソフトウェアの真正性検証(署名など)
  • フィールド機器の通信暗号化
  • 脆弱性対応プロセス(PSIRT)
  • ログ監査
AIや自立制御を搭載すると「高リスク区分」に入る可能性従来はソフトウェアの追加=仕様機能の拡張だったが、今後は高リスク製品として第三者認証が必要となる可能性ありAIを利用した
  • 予測制御
  • 画像認識
  • 自立走行 等

5. 製造業に必要な対策

EUで機械規則が施行される2027年以降は、「安全に関するソフトウェアの未管理」がそのまま法令違反リスクになる時代へ突入します。特に、以下のポイントは今すぐ準備が必要です:

  • ソフトウェアアップデートポリシーの整備
  • サイバーセキュリティ設計の導入
  • AI・自律機能を含む場合の第三者認証判断
  • 技術文書のデジタル化と継続アップデートフロー

これらは単なる規制対応という枠を超え、製品の信頼性・ブランド力・市場競争力を左右する重要な要素となります。

6. まとめ

機械規則の適用開始が迫るなか、私たち セキュリティ検証サービス・テストツール提供事業者は、製造業者の皆さまが直面する課題を外から支える専門パートナーとして、明確な役割を担う時代になっていると感じます。新規則は、サイバーセキュリティやソフトウェア起因のリスクを機械の基本的な安全性として扱うため、「安全性を第三者的に確認し、証跡として残すこと」の重要度がこれまで以上に高まります。

当社からは、以下の3つの支援をご提案します。

① セキュリティ要件を満たすための事前検証

2027年施行の機械規則では、ソフトウェアアップデートやネットワーク接続による危険動作のリスクが明確に規制対象となりました。そのため、製造業者には、「脆弱性が機械動作に影響を与えないか」「アップデート後も安全性が維持されているか」「外部攻撃で制御が改変されないか」といった、専門的なセキュリティ評価が求められます。当社は、ファジング、ペネトレーションテスト、脆弱性診断などのセキュリティ検証サービスを通して、メーカーが CE マーキングに必要な根拠を確実に準備できるよう支援します。

IoT機器セキュリティ検証サービス 詳細ページ

② テストツールを「安全性の証拠を残す」ために活用

機械規則では、ソフトウェアアップデートや機能追加が安全性に影響する可能性がある場合、再評価や再度の適合性確認が必要になります。当社が提供するファジングテストツールにより、製造業者は「安全性に影響しないことを証明できる」という重要な要件を効率的に満たすことができます。

ファジングテストツール 製品ページ

③ 高リスク機械の認証準備を「プロセス全体」で伴走

AIや自律機能を含む機械には第三者認証が求められる場合があり、これはメーカー単独では判断しにくい領域です。私たち検証サービス・テストツール提供事業者は、リスクアセスメントの技術的支援、機械規則に対応したセキュリティ要件整理、技術文書作成サポート、評価機関提出前の適合性チェックなどを通じて、「認証に通る設計と文書」をつくる工程を総合的にサポートします。

当社は、今後も製造業各社と連携し、法令準拠かつ機能進化を止めないバランスの取れた製品設計を支援していきたいと考えています。

このコラムの著者
株式会社ユビキタスAI エンベッデッド第3事業部 永井玲奈

株式会社ユビキタスAI

エンベデッド第3事業部

永井 玲奈​(ながい れな)

長年、組込みソフトウェアの営業・製品マーケティングに携わる。現在はユビキタスAIでIoT機器セキュリティ検証サービス事業の営業およびプロダクトマーケティングを担当。医療機器、車載製品、民生品などあらゆる機器を製造する大手製品ベンダーの多岐に渡るセキュリティ課題解決に取り組む。

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