連載|fTPMで考える、​IoTデバイスを​長く​守る​ための​セキュリティ​基盤設計 第3回 TCG TPM 2.0​仕様​への​準拠

連載第1回で掲げた3つの課題のうち、2つ目が「適切なプロトコル実装の困難さ」です。暗号処理や鍵管理を独自に実装すると、予期しない脆弱性が混入するリスクがあります。

これに対し、SEC-TPM™はTCG TPM 2.0仕様に準拠することでこの課題に対応しています。第3回となる今回は、TCG TPM2.0標準準拠のFirmware TPM(fTPM)を採用することで、デバイスメーカーにどのようなメリットがあるかについて解説します。

この連載の記事一覧

連載|fTPMで​考える、​IoT​デバイスを​長く​守る​ための​セキュリティ​基盤​設計

1. TCG TPM 2.0仕様への準拠

SEC-TPMの中核は、 TCGが策定した国際規格「TPM 2.0」仕様に準拠した fTPMです。TPM2.0への準拠により、以下のような利点をデバイスメーカーに提供します。

  • 標準コマンドのサポート:ブート測定、署名、暗号化などの操作を、TPM 2.0で定義された標準コマンドを使用して実行できます。
  • 実績ある標準仕様に基づいた開発:PC業界を中心に主要ベンダーが策定したTPM 2.0標準コマンドに準拠しているため、独自プロトコルではなく実績のある仕様に基づいて開発できます。

2. 秘密鍵の隔離管理

TCG TPM 2.0仕様は、鍵管理と秘匿性を標準化しています。例えば、認証などに用いられる秘密鍵においては、そのライフサイクルをTPM内に限定する設計を採用しています。SEC-TPMは、Arm TrustZone上のTEEにその実装を置くことでこれを実現しています。

  • Trusted Execution Environment(TEE)内での鍵生成と処理:TEE上のTPMにより、秘密鍵の生成および保持がなされます。TPMが担う鍵操作(署名、鍵の生成・保護など)はすべてTEE内で完結し、外部の攻撃から保護します。
  • Rich OSからの隔離:秘密鍵はTEE内でのみアクセス可能で、Rich OS(Linuxなど)からはアクセスできません。ハードウェアレベルの分離により、Rich OS側の状態に関わらず鍵の安全性が保たれます。

3. 標準APIによる開発支援

Rich OS上のアプリケーションからTPM2.0仕様に基づく標準APIを通じて、fTPMの操作を安全に行うことが可能です。

  • APIによるセキュリティ操作:アプリケーションはAPIを介してTPM機能を利用するため、秘密鍵を直接操作せずにセキュリティ操作を実行できます。
  • ポリシーベースの制御:TPM 2.0 で規定されたAPIを通じてポリシーを設定することにより、柔軟なアクセス制御が可能です。

4. まとめ

連載第3回では、SEC-TPMがTCG TPM 2.0仕様に準拠することによるメリットを概観しました。TCG TPM 2.0に準拠することで、標準化された暗号処理が可能となり、実装リスクの低減を図ることができます。第2回で述べたハードウェア分離と標準仕様の組み合わせにより、独自実装によるリスクを避けながら、高いセキュリティを確保できるのが、デバイスメーカーにとっての最大の利点です。


この連載の記事一覧

連載|fTPMで​考える、​IoT​デバイスを​長く​守る​ための​セキュリティ​基盤​設計

次回第4回は、デバイスのアクティベーションから廃棄までを管理する「クラウド連携とライフサイクル管理」について解説します。


より詳しく技術や​関連製品について​知りたい方へ

お気軽相談

本コラムに関係する技術や関連する製品について知りたい方は、お気軽にご相談ください。


製品情報

TPM2.0準拠Firmware TPM

SEC-TPM

ファームウェアレベルからOSレベルまでの保護を強力に支援
製品ページを見る

連載|fTPMで考える、IoTデバイスを長く守るためのセキュリティ基盤設計 第2回 ハードウェアによるドメイン分離

コラムを読む

連載|fTPMで考える、IoTデバイスを長く守るためのセキュリティ基盤設計 第1回 SEC-TPMとは何か

コラムを読む

「機械指令➡機械規則」時代の製造業が直面する変化と対応ポイント

コラムを読む

連載|4ステップで実現するIoTデバイスセキュリティ 第5回 サードパーティコードの評価

コラムを読む

連載|4ステップで実現するIoTデバイスセキュリティ 第4回 セキュリティ向上のための自動化ソフトウェア開発ツール

コラムを読む

日本の製造業者に求められるグローバル対応 ―JC-STARと英国PSTI法の相互承認がもたらすセキュリティ強化のチャンス

コラムを読む

連載|4ステップで実現するIoTデバイスセキュリティ 第3回 脅威分析とアセスメント

コラムを読む

連載|4ステップで実現するIoTデバイスセキュリティ 第2回 セキュリティ・ファースト設計

コラムを読む

連載|4ステップで実現するIoTデバイスセキュリティ 第1回 IoTデバイスのセキュリティを向上させる4ステップとは

コラムを読む

物流と産業の安全性を守る:ファジングという選択肢

コラムを読む

静的解析による並行性エラーの検出

コラムを読む

産業用ロボット安全規格の進化とセキュリティ:​ISO 10218シリーズ改訂の本質を読み解く

コラムを読む

静的解析の活用で汚染データから組込みアプリケーションを保護

コラムを読む

RED-DAとは?2025年8月に何が義務化される?

コラムを読む

印刷環境のセキュリティ強化:複合機(MFP)の脆弱性とその対策

コラムを読む

各国のIoT製品セキュリティ確保のための取り組み:米国 ―U.S. Cyber Trust Mark―

コラムを読む

各国のIoT製品セキュリティ確保のための取り組み:シンガポール ―サイバーセキュリティラベリングスキーム(CLS)

コラムを読む

各国のIoT製品セキュリティ確保のための取り組み:欧州

コラムを読む

太陽光発電と蓄電池システムの脆弱性:安全なエネルギーのためのセキュリティ対策

コラムを読む

各国のIoT製品セキュリティ確保のための取り組み:日本

コラムを読む

もう待てない、サイバーレジリエンス法対策

コラムを読む

各国のIoT製品セキュリティ確保のための取り組み: 英国

コラムを読む

ソフトウェアテストの新常識:ファジング入門

コラムを読む

JIS T 81001-5-1に準拠した医療機器のセキュリティ対策

コラムを読む

サプライチェーン攻撃と脆弱性テスト

コラムを読む

セキュリティ規格について

コラムを読む

ファジングとは?

コラムを読む

脆弱性検証―何をどこまで実施すれば良い?

コラムを読む

HEMS機器の脆弱性検証

コラムを読む

ファジングの限界

コラムを読む
メニューを閉じる
一つ前に戻る